反復可能 (Iterable トレイトはコレクション階層の上から2番目に位置する。このトレイトの全メソッドは、コレクション内の要素を1つずつ返す抽象メソッド iterator に基づいている。Iterable では、Traversable トレイトの foreach メソッドも iteratorに基づいて実装されている。以下が実際の実装だ:
def foreach[U](f: Elem => U): Unit = {
  val it = iterator
  while (it.hasNext) f(it.next())
}
多くの Iterable のサブクラスは、より効率的な実装を提供するため、上の foreach の標準実装をオーバーライドしている。 foreach は Traversable の全ての演算の基となっているため、効率的であることが重要なのだ。
Iterable にはイテレータを返すもう2つのメソッドがある: grouped と sliding だ。これらのイテレータは単一の要素を返すのではなく、元のコレクションの部分列を返す。これらのメソッドに渡された引数がこの部分列の最大サイズとなる。grouped メソッドは要素を n 個づつの「かたまり」にして返すのに対し、 sliding は n 個の要素から成る「窓」をスライドさせて返す。この二つのメソッドの違いは REPL でのやりとりを見れば明らかになるはずだ。:
scala> val xs = List(1, 2, 3, 4, 5)
xs: List[Int] = List(1, 2, 3, 4, 5)
scala> val git = xs grouped 3
git: Iterator[List[Int]] = non-empty iterator
scala> git.next()
res3: List[Int] = List(1, 2, 3)
scala> git.next()
res4: List[Int] = List(4, 5)
scala> val sit = xs sliding 3
sit: Iterator[List[Int]] = non-empty iterator
scala> sit.next()
res5: List[Int] = List(1, 2, 3)
scala> sit.next()
res6: List[Int] = List(2, 3, 4)
scala> sit.next()
res7: List[Int] = List(3, 4, 5)
Iterable トレイトは、 Traversable からのメソッドの他に、イテレータがあることで効率的に実装することができる他のメソッドを追加する。それらのメソッドを以下の表にまとめる。
Iterable トレイトの演算
| 使用例 | 振る舞い | 
|---|---|
| 抽象メソッド: | |
| xs.iterator | xs内の全ての要素をforeachが走査するのと同じ順序で返すイテレータ。 | 
| 他のイテレータ: | |
| xs grouped size | このコレクション内の要素を固定サイズの「かたまり」にして返すイテレータ。 | 
| xs sliding size | このコレクション内の要素を固定サイズの「窓」をスライドさせて返すイテレータ。 | 
| サブコレクション取得演算: | |
| xs takeRight n | xsの最後のn個の要素から成るコレクション (順序が定義されていない場合は、任意のn個の要素から成るコレクション)。 | 
| xs dropRight n | コレクションから xstakeRightnを除いた残りの部分。 | 
| zip 演算: | |
| xs zip ys | xsとysのそれぞれから対応する要素をペアにしたIterable。 | 
| xs zipAll (ys, x, y) | xsとysのそれぞれから対応する要素をペアにしたIterableで、もし片方が短い場合はxかyを使って長いほうに合わせる。 | 
| xs.zipWithIndex | xs内の要素とその添字をペアにしたIterable。 | 
| 比較演算: | |
| xs sameElements ys | xsとysが同じ要素を同じ順序で格納しているかを調べる。 | 
継承階層では Iterable 直下に Seq、Set、Map という三つのトレイトがある。
この三つのトレイトに共通することは apply メソッドと isDefinedAt メソッドを持ったトレイト 
PartialFunction を実装しているということだ。
しかし、PartialFunction の実装方法は三者三様である。
列は apply を位置的な添字として用いられており、要素は常に 0
から数えられる。だから、Seq(1, 2, 3)(1) は 2 を返す。
集合では apply は所属を調べるのに用いられる。
例えば、Set('a', 'b', 'c')('b') は true を返し、Set()('a') は false を返す。
最後に、マップでは apply は要素の選択に用いられている。
例えば、Map('a' -> 1, 'b' -> 10, 'c' -> 100)('b') は 10 を返す。
次に、この3つのコレクションをより詳しく説明しよう。